本年度文化荘文化大賞が以下の通り決定いたしました。
◯大賞
舞城王太郎「淵の王」
◯大賞最終候補
保坂和志「プレーンソング 草の上の朝食」
庄野潤三「静物」
三津田信三「怪談のテープ起こし」
SACOYANS「Gasoline Rainbow」
◯選考ノミネート作品
倉里晴「訪問者」
波世側まる「コメント欄には貴族の娘とかいっぱい書いてありました。」
舞城王太郎「淵の王」
JR東日本「スイカ&ライチウォーター」
MOONSTAR「ジャガーエースG」
大江健三郎「人間の羊」
Sweet Trip「Darkness」
親愛なるQに捧ぐ「神様」
三津田信三「怪談のテープ起こし」
マーゴ・ガーヤン「The Hum」
滝口悠生「死んでいない者」
Family Mart「今治タオル」
香椎響子「君はごめんが言えない」
庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」
庄野潤三「静物」
保坂和志「プレーンソング 草の上の朝食」
けらえいこ「西反」
EMERALD FOUR「天国から離れて」
SACOYANS「Gasoline Rainbow」
OGRE YOU ASSHOLE「また明日」
PSY・Z「Woman・S」
金属バット「伊佐坂先生の異世界転生本」
ジェラルド・ウェイのライブでモニターに映る自分達に気づくファンの皆
選考者:ワンダフルデイズモーニング、静谷静一、志水あみ、あさくらなおき
選考日:2022年3月31日
選考会場:ドトール西荻窪南口店
◯選考者コメント:ワンダフルデイズモーニング
今年度は過去の中で最も早くその選考が終了した。しかしそれは純然なる喜びに満ちていたのかというと、そういうわけでもない。少なくとも私個人の見解であるが。「淵の王」が圧倒的すぎた。これまでの私(達)の価値観を揺さぶり、激励し、希望を与える。これからの人生に大きく影響する。そういう作品であった。ゆえに、「淵の王」が出てきた時点でほとんど大賞は決まってしまったと言っても過言ではない。そのことが“純然たる喜びに満ちていたわけではない”と私が申し上げるのは、つまりその圧倒的感動によって、他のノミネート作品がどうやっても勝てなくなってしまったからである。そのことは他の作品の“低さ”というニュアンスを持たない。それがもどかしいのである。少なくとも大賞最終候補に並んだ作品群は、例年ならば大賞を獲るにしかるべきである。
◯選考者コメント:志水あみ
人生に影響を与える作品というのはそう何度も出逢えるものではない。「淵の王」はその一点において大賞に相応しく思った。むしろ我々が苦心したのは、ノミネート作品群から最終候補を選出する段階にあった。“決着のついた後の選考“のような作業には、どこか出来レースを行なっているんじゃないかという自己嫌悪に近い後ろめたさがなかったかといえば嘘になるが、しかしむしろ最終候補の選考こそが豊かな時間を我々にもたらしたようにも思えるから不思議である。前年の例を出すまでもなく「我々は今年度もたくさんの素晴らしい文化に触れたのだ」という極めて原始的な感動があった。個人的には、鑑賞という行為において“恐怖“を感じることがほとんど不能のニュアンスで稀な中、はっきりと「これは怖い」と思った唯一である「怪談のテープ起こし」が強く印象に残っている。
◯選考者コメント:静谷静一
大賞である「淵の王」のことは他の選考者が語るであろうし、そうでなくとも今年度の文化大賞において「淵の王」について語ることはあまり意味を成さないように思える。「淵の王」以外の作品について語ることこそがこの文化大賞には意義深いのではないだろうか。「プレーンソング 草の上の朝食」は、二つのどちらか一方を選出することは無意味であると思われたので、講談社文庫「プレーンソング 草の上の朝食」その一冊が一つの作品としてカウントされた。逆に「静物」については、私は「プレーンソング 草の上の朝食」と同じように、作品集である新潮文庫「プールサイド小景・静物」をノミネートしても良いように思ったが、その中の「静物」だけが選出された。この二つの事案は面白いと私は思うし、そのことと大賞である「淵の王」を結びつけることは可能であると思う。これら三つの候補作が選ばれているのは通底する理由があるだろう。しかし、やや複雑になるが、“我々の中“に通底するナニカに、この三候補作品が同じようにヒットしたということである。それは我々の今の気分や嗜好と言い換えることもできるかもしれない。そう考えれば、(この文化大賞における)選考などというのはわりにいい加減な行為に思える。やはり権威などはいらないのだ。
◯選考者コメント:あさくらなおき
大賞が決まってからの時間が長かった。集まってすぐに大賞が決まったので今回は楽だったと思ったが、そういうことでもないっぽかった。