20171018

おばあちゃん

僕は実家住まいなので、東京へ毎日毎日1時間と少し電車に乗って行く。
10月に入ってからだったと思うけど、実家をそろそろ出てはどうかという話がお父さんからあった。
個人的にも諸事情でそろそろ家を出ようと思っていたので「やっとGOが出たか」という感じだった(うちはわりと厳粛な家なので上からのGOなしに勝手に暮らせない)。

そんな折。

最寄り駅の近くのサークルKの商品棚からどんどん物がなくなっていって、「震災以来の品薄だけどなんなの?」と思っていたらリニューアル工事に入るので10月いっぱいお休みしますとのことだった。
たばこを取り扱ってるコンビニで一番近い店だったから、困ったなと思った。

しばらくして、家の最寄りのサンクス(たばこは取り扱ってない)に行ったら張り紙があった。11月1日9:00で閉店するとのことだった。
何年も何年も、主に夜中と昼、主に駄菓子を買いに来てきていた店だったし、こちらは"閉店"だというので、困ったもあったけど普通にショックだった。

だけどふと、(コンビニが象徴してるのもどうかと思うけど)なんか環境も門出を促している感じだなと思った。
僕の人生はこういうタイミングがすごく重なることが多い。「今がその時」みたいな節目がかなり色々な形で現れる。
今となっては今年、映画が劇場公開されたのもきっかけだったとも思う。そして。いや「そして」っていうか。

おばあちゃんが死んでしまった。
さっきだ。
心筋梗塞だった。

まだどういうことなのかよくわかってない。よくわかってないからこうして書けるというのもあって書いている。
なぜならおばあちゃんはすごく元気で、病気だったわけでもなく、伏せっているおじいちゃんを毎日せっせとお風呂に入れ、トイレに連れ、テレビを観ていたから。

昨日ちょっと体調悪かったっぽくて、いつもなら絶対食べるシフォンケーキみたいなやつ食べなかったけど、だいたい秋口にちょっと体調を壊しがちなのでそこまで気に留めてなかった。

だって一昨日は一緒にリンゴを食べたんだ。
夕飯のあとでおばあちゃんと台所でリンゴの話をして、お母さんに「リンゴが食べてぇよ」とねだり、剥いてもらったリンゴを2人で3個ずつ食べた。
おばあちゃんは「あたしまだ2個」と言いながら3個目までちゃんと食べていた。
「おばあちゃんさぁ、もうすぐ誕生日じゃん、またアレ買ってきてやるよ。南林間のレーズンクッキーさぁ。」と言うと「おいしいリンゴでいいよ。」と言っていた。
南林間のレーズンクッキーというのは、お店の名前は忘れたけど南林間駅にレーズンクッキーで有名なお店があって、今年の5月だったか、誰かに頂き物で貰ったソレを食べておばあちゃんはひどく衝撃を受け「あそこのレーズンクッキー食べたらもう他のレーズンクッキーは食べらんないね」と言っていた。だからなんとなく、買って帰ったことがあったのだ。すごく喜ばれた。
俺はたぶん孫の誰よりもおばあちゃんが好きだったから。そしてたぶん家族の誰よりもおばあちゃんと仲が良かったから。財産全部あげるからねとよく言われた。

毎週日曜日に、おばあちゃんはNHKのど自慢を観る。
俺はおばあちゃんとのど自慢を観るのが好きで、観ながらいつも「この歌ホントにある曲?」「こんな歌ないでしょ」とチャチャを入れるんだけど、その度に「なに言ってんのよ(笑)」「あるから歌ってるんでしょ(笑)」「あんたは嘘ばっかつく(笑)」と笑ってくれる。それが楽しかった。
他にも楽しいのはあって、お昼時に「今やってる朝の連続テレビ小説はおもしれぇの?」と尋ねると決まって「おォ〜もしろいよォ〜!」と言う。このやりとりも週に2回くらいやる。

こないだ、朝ご飯を食べていたら「ちょっと桂ちゃん手伝って」と言われ、なぁにとついて行った。
庭に生えてるの柚子と柿が今年は大きく実ったからとってほしいということだった。うちの庭は広いので、柿は知ってたけど柚子は知らなかった。俺は物干し竿で柚子と柿の実をぶっ叩いて落としておばあちゃんに渡した。サンキューサンキューと言って、とても喜んでくれた。ちなみに、ぶっ叩いた時は「ヤッター!」と言った。かわいかった。

大学入りたての頃、W稲田の映画サークルに少し在籍していて、帰りが遅かったある日、おばあちゃんが「あんた帰りが遅いけど、シャブやってんじゃないだろうねぇ!」と言ってきた。この話は友達の将生にだいぶウケ、話すたびにウケる。

大学2年か3年くらいから全然学校行ってない時期があって、おばあちゃんは俺が部屋で引きこもって爆弾を作ったりしていると思っていたらしい。
最近ようやく映画館で自分の作った映画が上映できることになったのだが、それが決まった時お母さんよりも先におばあちゃんに話した。編集が佳境のころ、「あんた今どんなの作ってるのよ、おもしろいの?」と尋ねられ、これこれこういう映画なんだと話したら おばあちゃんは「おもしろいね。たいしたもんだね。部屋で色んなこと考えてんだね。」と言ってくれた。忘れない。
劇場公開の前日にiPadで完成した映画を観せたら、おばあちゃんが泣いた。大河ドラマでしか泣かない人なのに。「もっと見ていたい世界だね。あんた、たいしたもんだね。」と言ってくれた。あんまり観客ウケするような作品ではなかったから、すごくびっくりした。忘れない。


おばあちゃんは時々「彼女いないの?」とか「あんたはどんな人と結婚すんのかねぇ」とか「はやくあんたの結婚式が見たい」と言った。
いないよと毎回答えつつ、どんな人と結婚して欲しいの?と尋ねると「どーんなんでもいいよ」と言っていた。俺はだからそれもあって、早く結婚してしまいたかった。彼女がいる時が全然なくてごめん。こんなに自分がモテないことを怨むこともない。

いつも「あんたが一等ハンサムだね」と言ってくれていた。俺もおばあちゃんが世界で一番かわいいと思っている。

畑の草むしり一緒にした。
お墓参りもいつも2人で行った。
おばあちゃんのおつかいのメモの切れ端、糊でノートの表紙に貼ってるよ。字が好きだったから。
劇場デビュー、できたよ。爆弾じゃなくて映画だったね。観てもらえてよかった。
立派になるのだけ、間に合わなかったね。

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