本年度文化荘文化大賞が以下の通り決定いたしました。
◯大賞
メダロット超可動1/12 クロトジル/シンザン
◯大賞最終候補
保坂和志「この人の閾」
西尾佳織「緑子の部屋」
挫・人間「天使と人工衛星」
◯選考ノミネート作品
橋本治「ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件」
阿部和重「ブラックチェンバーミュージック」
佐伯一麦「ア・ルース・ボーイ」
島田荘司「占星術殺人事件」
辻征夫「きみがむこうから……」
保坂和志「この人の閾」
滝口悠生「ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス」
西尾佳織「緑子の部屋」
澤村伊智「怪談怪談」
岡田利規「楽観的な方のケース」
三津田信三「ついてくるもの」
オーガスト・ダーレス「淋しい場所」
W・デ・ラ・メア「なぞ」
Jack Stauber「dumpstar girl」
aiko「kisshug」
kurayamisaka「farewell」
Julia Jacklin『PRE PLEASURE』
瀬川おんぷ「北極星」
佐野元春「約束の橋」
挫・人間「天使と人工衛星」
ランジャタイ「礼儀正しいゴリラの作り方」
ぱーてぃーちゃん「常に心にキッズを」
肉汁サイドストーリー「あ、無情」
排気口「アイワナシーユーアゲイン」
木村美月の企画「幽霊塔と私と乱歩の話」
Canon sc-2000
コクと旨味の一風堂とんこつラーメンスープ
カール事務器 CB-8250-U
パトリック・ロジェ チョコレートパッケージ各種
タチカワ フリーペン軸 T-40
超可動1/12メダロット クロトジル/シンザン
岸辺露伴は動かない「くしゃがら」
牧野真莉愛による送辞(森戸知沙希/加賀楓)
金田一少年の事件簿 アバンからタイトルインへの雰囲気の落差
サントリー「烏龍茶 ごはんの革命・ラーメン篇」
TBC「ぜったいトリコにしてみせる篇」
岡田将生の本気プロポーズ
選考者:ワンダフルデイズモーニング、静谷静一、志水あみ、あさくらなおき
選考日:2023年3月31日
選考会場:ドトール西荻窪南口店
○選考者コメント:ワンダフルデイズモーニング
今年度の大賞に選ばれた「超可動メダロット1/12 クロトジル/シンザン」はフィギュアである。このことが昨年までと比べて最も大きな差異であろう。私が最も積極的に推した。しかし断っておきたいのは、昨年までの傾向を踏まえた選考であるとか、賞自体の幅を拡大しようとかという偏重な思惑でそうした訳ではないということである。あくまでも全てのノミネート作品を比較検討し、そこで私が最も大きく感動したものを推したにすぎない。それがたまたま今回は例年までと大きく異なる形態であったから、ある見方では異例になっただけの話である。さて最も強く推した者の責務とは、他の選考者のコメントよりも大賞受賞作への想いを語るということにあるのではないかと思う。メダロットのフィギュアというのは「メダロット」発表後今日に至るまで継続的にさまざまなシリーズが発表されてきてはいたが、「メダロット5」登場機体であるクロトジル/シンザンの公式フィギュアは「メダロット5」発表後二〇年間一度も作られることがなかった。「5」およびその続編「G」がアニメ化されていないことが大きな理由かもしれないが、私はすべての主人公機体の中で「5」のクロトジル/シンザンに最も強く心を惹かれていたので、フィギュアの造られていないことに寂しさを感じていた。そしてだからこそ今回のフィギュア化にはひとしおの感慨を持ったのである。とはいえ、それだけの理由、つまり対象そのもの(フィギュア)ではなくてその対象を目にし手にする前までの思い入れは大賞に推す根拠には不十分である。逆にいえば、超可動メダロット1/12 クロトジル/シンザン そのものは、私ひいては我々の大きな期待と一抹の不安を大きく超える感動をもたらしたのである。クオリティの高さということに関しては、我々は門外漢であるためコメントを控えるが、二体のフィギュアを並べてあらゆるポーズをさせて何時間も友人と大声ではしゃいだ夜があった。あの夜、少なくとも私は自分が小学生に戻ったかのような錯覚を感じたが、振り返ってみれば私は小学生時代ですら、あそこまで無邪気におもちゃで遊んだことなどなかった。子供というのは往々にして大人に憧れ、ゆえに子供でありながら子供みたいにはしゃぐのを堪えるものだ。だがもっと根本的に、私は本当に自分がカッコイイと思っているおもちゃで、そのカッコよさに無邪気にはしゃぎあえる友達がいなかったのかもしれない。この考察は答えを持たないし無意味なのでやめよう。伝えたいことは、そんな時期があったかも判然としないような幻の童心を追体験したあの時間への感動が、私の強い推薦その根拠になったということだ。
○選考者コメント:志水あみ
これまでの大賞作品の傾向と異なる作品が大賞に選ばれたことは文化荘文化大賞の幅の広さを具体的に感じるという点で面白く感じるが、そもそもノミネートされている時点でその形態に有利も不利もなく、すべてのノミネート作品は平等に選考の俎上に置かれるという前提を鑑みれば、異例という言葉は安直のように感じるし、私が先述した「面白く感じる」というのもあくまで結果そのものに対する個人の感想の範疇である。さて私個人としては「緑子の部屋」を推した。ノミネート作品というのはそのどれもが強い感動と鑑賞体験への喜びがその選出において基準となるが、「緑子の部屋」は私個人の大賞推薦傾向である「敗北感」を最も強く感じた小説だったからである。「緑子の部屋」には分岐ないし並列された世界の様相が、私たちの生きている世界および私たちが認識していない世界というものを遠景に据えられた寓話として語られていた。しかしこの「作品における世界と我々の生きる世界の関係性」という感動は、たとえば保坂和志「この人の閾」にも感じたことであって、だから私は「緑子の部屋」と「この人の閾」の二択で選考が対立するのではないかと予想していたが、結局選考は弁証法的に帰結した。私が孤軍奮闘を貫けなかったのは、「緑子の部屋」「この人の閾」のどちらにも強く惹かれ、しかしそれが似たような感動を持つがゆえに迷っている、という選考においてはある種の弱点を抱えた状態で臨んだことが理由なのかもしれない。私は他の選考者の大賞作品への熱意および弁論に納得してしまった。あの場においてそれは敗北を意味した。
○選考者コメント:静谷静一
今回のノミネート作品群には例年に比べて一つの顕著な傾向があったのではないかというのが私の意見である。それは当初からあったのではなく結果的に浮かび上がってきたテーマと言い換えることもできるかもしれない。何かというと「切実さ」ないし「懸命さ」である。失われるものへの視線/失われたものからの視線、今ここにあるものへの執着/今ここにないものへの待望、など長く具体的に言い換えればキリがなくなってしまうのでもう控えるが、今回のノミネート群の多くにこういった「切実さ」が宿っているように感じた。並べられたノミネート郡に通底している、かようなテーマを踏まえ、最終選考作品の中では最も今年度の傾向に即す感動を持つ「天使と人工衛星」を選んだが、しかしやや消極的ではあった。消極的というのは先述の「今年度のテーマ性に最も合っている」という理由で推したからというのがあるが、心惹かれる理由というのは具体的な説明を必ずしも必要としないというのもまた思う。「天使と人工衛星」にも具体的な説明を伴わない感動がたしかにあったのだが、他のノミネート作品の多くも持っている「切実さ」でその感動を推し進めるには、逆説的に分散する感覚とそこへの戸惑いがあった。結果的に大賞になった「超可動メダロット1/12 クロトジル/シンザン」に私は反論はない。むしろそれ自体には物語を持ち得ないオブジェクトな作品が今年度の大賞に収まったというのは興味深く感じる。切実さを語りかけてくることができないはずのフィギュアなる物体が、むしろ我々に対象への切実な想いを呼び起こしたのである。やはりテーマや傾向はいつも後から発見されて然るべきである。蛇足になるかもしれないが、最終候補には残らなかった「岡田将生の本気プロポーズ」にも、私はとても深い切実さを感じた。
○選考者コメント:あさくらなおき
ぱーてぃーちゃんハマってたけど、まぁ大賞最終候補どれもおもろかったんだしそんなかでフィギュアが獲るの珍しい感じになるからそれでいいんじゃないかと思ったけど、そのあと長々と話すことになったからどうやらそういうことじゃないっぽかった。